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③老齢年金の給付額
「老齢年金は制度が複雑で、いくら給付されるのか、よく分からない」という話を、聞くことが有ります。年金制度は、昭和36年と昭和61年に、大改正が有り、そしてそれぞれに、「経過措置」と呼ばれる、移行準備期間を定めた為、一般の人には、とても分かりにくいものになっています。旧社会保険庁による、ずさんなデータ管理も、大きな社会問題となり、制度そのものの信頼性も揺らいでいます。

1. 保険料の計算
●第1号被保険者の場合
すなわち自営業やアルバイト等、サラリーマン以外の世帯の人は、国民年金の保険料を、自分で支払います。この金額は、平成16年の改正で、平成29年度まで、毎年280円ずつ上がることが、決められており、平成26年度は月額15,250円です。
(29年度に16,900円となった段階で、固定することになっています)
ただ、この金額は、物価や賃金の変動率によって、修正できることになっていて(保険料改定率)、実際の平成26年度の保険料は、16,100円×0.947=15,250と決定されました。
●第2号被保険者の場合
厚生年金保険に加入している、サラリーマンの保険料は、金額ではなく、「保険料率」が決められており、これも平成29年まで、毎年0.354%ずつ、上がることが決まっており、平成29年8月からは、18.3%で固定されることになっています。
計算方法は原則として、毎月の給料(標準報酬月額)と、賞与(標準賞与額)に、「保険料率(平成25年9月~平成26年8月までは、17.120%)」をかけて計算した保険料を、会社と折半負担します。
保険料計算から納付手続きまで、全て会社で行うことになります。
●第3号被保険者の場合
すなわちサラリーマンの主婦(主夫)には、保険料納付の義務が有りません。
稼ぎ手であるサラリーマンの保険料をもって、その「内助の功」に応える、という仕組みになっています。
最近では、「年金の離婚分割」も話題になり、不公平感が根強い、この第3号制度は、今のところ、抜本的な改正案は、出されておりません。

2. 老齢年金の計算
老齢年金の計算は、かなり複雑であり、実際の給付額と計算式が合うことは、あまり有りません。
特に、大正、昭和を生き抜いた、高齢者の方の年金は、新旧の法律が入り乱れ、そこに「戦時加算」が、複雑に加算されている為、予想外の金額になることも有ります。
又、合算対象期間(カラ期間)や、様々な救済措置が認められているため、実際の計算は、年金事務所のコンピューターの記録に、頼らざるを得ません。
その為、「ねんきん定期便」が導入されました。

3. 老齢基礎年金の金額
老齢基礎年金の満額は、778,500円(平成26年度)です。
満額受給できるのは、国民年金の保険料を、40年間(480月分)納付した方です。
国民年金の保険料納付義務は、20歳~60歳までとなっており、65歳から満額の老齢基礎年金をもらうというのが原則です。
保険料を納付した月数が、480月に満たない人は、満額から1ヶ月不足毎に、1/480ずつマイナスされます。
但し、納付実績が、25年間(300月)未満の場合は、老齢基礎年金は1円も支給されないことになっています。
尚、サラリーマン生活を40年以上続けた、第2号被保険者も、もらえる老齢基礎年金の満額は変わりません。
480月以上払い続けた保険料分は、老齢厚生年金に反映されます。

4. 老齢厚生年金の金額
老齢厚生年金の金額は、在職中の給料と賞与に、保険料を支払った月数と乗数、スライド率等の、複雑な数字をかけて算出します。
目標として、現役世代の収入の50%を保証できるように、複雑な計算をしています。
サラリーマンである以上、年齢を問わず、社会保険料の納付義務が発生しますので、16歳で就職した人も、67歳で働いている人も、厚生年金に70歳まで加入することになります。

5. 国民年金を払えない場合
国民年金の保険料は、申請すれば、免除や減額の措置が有り、又、追納(事後納付)や60歳以上で、特別加入できる制度も有ります。
「払えない」のと「払わない」のとでは、将来もらえる年金額に、大きな違いが出ますので、注意しましょう。
忘れてはならないのが、老齢厚生年金は、老齢基礎年金の上乗せであること、
すなわち、どんなに給料が高くて、多額の厚生年金保険料を、納めていたとしても、加入月数が300月に満たない場合、老齢年金は受給できないことになります。
尚、平成24年10月~平成27年9月までの3年間に限り、過去10年分まで納めることのできる、「国民年金保険料の後納制度」が始まっています。
後納制度を利用することで、年金額が増えたり、納付した期間が不足していて、年金を受給できなかった人が、年金受給資格を得られる場合が有ります。
平成27年10月から、消費税の改正と併せて、これまで25年間(300月)必要だった納付済、免除期間が10年(120月)に変更となる予定です。
もしもこれまで、「300月!?そんなの無理だよ!」と思って、未納だった方や、若年の方、個人で事業を営んでいた方も、年金の対象となる可能性が、大いに有ります。
「300月は無理でも、120月ならなんとか・・」と思われている方が、いらっしゃいましたら、一度最寄りの年金事務所に問い合わせてみてください。
現在は、特別の窓口が設けられていることが多いようです。

6. 第3号被保険者で気を付けること
第3号被保険者には、保険料納付義務が有りません。
又、加入や変更の届け出も、全て第2号の配偶者の勤務先で、行ってくれます。
では、第2号の配偶者が退職した場合は?
第3号の主婦(主夫)は、第2号の配偶者が退職して、第1号になると、同時に第1号になります。
従って、夫婦ともに、第1号被保険者として、国民年金保険料の納付義務が、発生するのです。
この変更の手続きは、会社ではやってくれません。
主婦(主夫)の無年金救済問題として、大きな問題になりましたが、今では会社に全て依存していたサラリーマン世帯にとって、盲点となりやすいので、要注意です。

7. 老齢年金の支給方法
老齢年金は、2ヶ月に1回、偶数月の15日に、前2ヶ月分が口座に振込まれます。
老後は海外で、という方には、手数料はかかりますが、海外の口座にも振込可能です。

8. 離婚時の分割制度
平成19年度には、「厚生年金の離婚時分割制度(合意分割)」が、そして平成20年度には、「厚生年金の離婚時の第3号期間における分割制度(3号分割)」が始まりました。
どちらも、第2号被保険者の給料を、当事者間で分割して、それぞれの年金額に反映させようというものです。

9. 脱退手当金をもらった場合
脱退手当金は、いわば厚生年金の手切れ金です。
一度もらってしまうと、その期間の年金加入期間は、無くなるのですが、諦めないで調べる価値は有ります。
脱退手当金だと思っていたが、実は基金の上積年金の一時金だった、というなら、年金加入記録はそのまま残るはずです。
支給時期とその金額を、自分の記憶や記録と照合して、確認することは大切です。

④老齢年金はいつもらえるのか?
1.「あの人はもう年金をもらえるみたいよ」「私はまだもらえないのかしら」
等、年金の不公平感には、年金がもらえる時期が、人によって違うことも指摘されています。
これも、年金制度改正の度に、経過措置がとられたことにより、制度を複雑にしてしまったということに繋がっています。
(1)年金支給時期
老齢基礎年金は、65歳からもらえることになっています。
第1号、第2号、第3号の区別無く、条件は同じですし、加入月数により決まる年金額も同じです。
違いが有るのは、老齢厚生年金です。
これは、生年月日により、支給時期が異なっています。
65歳前にもらえる老齢厚生年金を「特別支給の老齢厚生年金」といい、65歳以降にもらえる年金と区別しています。
男性で昭和36年4月1日以前生まれの方、女性で昭和41年4月1日以前生まれの方は、生年月日の関係で、「特別支給の老齢厚生年金」を、60歳から64歳の間に、受け取れることが有ります。
(2)年金をもらう時期を早くするには
老齢年金には、繰り上げ制度が有ります。
年金の受給権を満たした方が、本人の申請により、65歳よりも前に、年金を受け取ることができます。
この場合、次の点に注意が必要です。
●繰り上げは、請求した月より、94%~70%の範囲で、支給額を減らされてします。
●減額された年金額は、最後まで回復できない。
●繰り上げ受給をした後、持病が進行しても、障害年金の請求はできなくなる。
(3)年金をもっと増やすことはできるか
基金や付加年金を使って、保険料を多く支払うことができますが、それ以外に、年金の受給期間を遅らせることで、受け取る年金額を増やすことができます。
これを「老齢年金の繰り下げ制度」といいます。
65歳でもらえる年金額を、100%とすると、70歳まで受給を待つことで、最大142%まで、年金額を増やすことができます。
老齢年金は、受給権者本人が生存している間のみ、支給されるものです。
計算上は、82歳以上長生きをされる方であれば、繰り下げ支給の方が得になります。
尚、第1号被保険者で前述した、付加年金保険料を納付していた場合、付加年金額も同様に増額されます。
(4)年金の一部繰り上げについて
これも経過措置による、年金支給年齢の違いにより発生した、難解な制度です。
男性で昭和24年4月1日以前生まれの方、女性で昭和29年4月1日以前生まれの方は、65歳前後に支給される、老齢厚生年金の一部分のみを繰り上げて、受給することができます。
年金全体の減額幅を、小さくする為のものですが、計算が複雑になりますので、事前に年金事務所窓口で相談することが必要です。

⑤老齢年金はどうやってもらうの?
公的年金は、全て申請主義です。
保険料はしっかり納めて、受給権を確保したとしても、その権利を行使するには、自分で手続きを行わない限り、年金は受給できません。
又、忘れられた年金や、過去に確かにかけたはずの年金についても、調べるのはあくまで自分自身です。
自己責任の時代は、年金にも言えることです。
手続きで損をしないように、基本的な流れは知っておきましょう。

1. 60歳になったらやること
まず60歳になったら、やるべきことが有ります。
60歳になる3ヶ月前位になると、厚生年金の加入者には、日本年金機構から、「裁定請求書」という書類が送られてくるはずです。
特別支給の老齢厚生年金の受給権が有る人は、60歳からの年金受取準備の為に、この書類を記入して、年金事務所へ提出します。
万一、受給手続きを忘れていた場合、事項は受給権が発生してから、5年間有りますので、諦めないこと。
尚、年金の受給を開始した後になっても、年金記録に不備が見つかって、記録を訂正する場合には、この5年間の時効に関係無く、いつでも受給権発生時にさかのぼって、年金額が増額されることになっています。

2. 60歳で仕事をしている人
それなりの給料をもらって、在職している60歳の方は、たくさんおられると思います。
65歳まで年金は必要無い、という場合にも、受給権の確認と、申請手続き(後述する在職老齢年金)は必要です。
その場合、年金証明は届きますが、支給される年金額が0円になっているはずです。

3. 65歳になった時
特別支給の老齢厚生年金を受けている人が、65歳になった時は、65歳になる誕生月の初め頃(1日生まれの方は前月の初め頃)に、日本年金機構から、「国民年金・厚生年金保険老齢給付裁定請求書」というハガキが届きますので、必ず誕生月の末日(1日生まれの方は前月の末日)までに到着するように、提出してください。
65歳になって、初めて老齢基礎年金を、受給する場合には、日本保険機構から、誕生日の3ヶ月前位に、裁定請求書が送られてきます。

4. 繰り上げ支給をしたい時
65歳前に繰り上げできる、老齢年金を受給したい時は、年金事務所に「老齢年金支給繰上げ請求書」を提出します。
基礎年金だけの場合と、基礎年金と老齢厚生年金の両方を繰り上げる場合とで、提出する書類が異なりますので、注意してください。

年金の種類はいろいろあり、受給される状況によっても様々です。終活していくうえでとても重要な年金についての知識を蓄え専門家にアドバイスを貰うことが重要だと思います。